平塚柔道物語その23
平塚柔道協会 会長 奥山晴治
2008年5月1日

23.平塚柔道物語・その23

真田州二郎の指導力・素質を見抜く

 指導者は選手の素質を見抜き、長所を発見し、育てていく力が必要である。

 真田州二郎(平塚市立浜岳中教師・柔道部顧問)は、前任校の大野中時代から多くの選手を輩出させており、 彼はその両方を兼ね備えた優れた指導者と言っても過言ではない。

 現在、東海大学柔道部の女子選手である塩澤茜は、中学1年の体育の時間に100mを14秒台で走ったという。 その一コマを見て真田は言った。「その脚力を柔道で生かして見ないか」と。

 それが塩澤の柔道を始めるキッカケとなった。彼女は、入部してから半年後に県大会1年生の部で優勝。 2年後、関東大会で優勝する選手に育っている。

 彼女の長所は、すばらしい脚力に加えて、粘り強さがあった。3年生の時、県の団体決勝代表戦で、 絶対に勝てないと思われていた神奈川ではNo.1の相原中の選手を、時間切れ数秒前に背負い投げを決め、 大野中に劇的な優勝をもたらせた。

 その時の仲間は、現在神奈川大の青木愛と、日体大の仁藤愛であった。 この「3羽烏」は共に良きライバルであり親友であった。

 塩澤は粘り強さ、青木は努力家、仁藤は一生懸命という3人の長所を真田は見事に生かし、 関東大会や全国大会に出場させたのである。

 東海大学柔道部60kg級代表の升水翔兵選手は中学1年で市内の大会で優勝。2年の時は県大会で優勝。 中学3年では何と関東大会でも優勝をした。だが真田は一度も彼をほめなかった。勝っても負けても厳しかった。 しかし、県代表として全国大会の個人戦に出場し、準優勝に輝いた。その時初めて真田は「良くやった。 お疲れ様」と労をねぎらった。升水はうれしくて泣いてしまったという。

 真田は初めから、升水は全国大会の舞台で活躍できる選手だと素質を見抜き、目標を全国に置いたのであった。 彼の心に秘めた強い思いが升水を大きく成長させ全国大会で爆発させたのに違いない。

 また、大野中の柔道部から、レスリングに転向させ、現在全日本ジュニアレスリング選手権第3位の実力者金子貴宏選手がいる。 神奈川大学2年生であるが、真田は中学の時金子の柔道を見て思った。 常に背中のつかない戦いぶりと他の選手にはない恐ろしいくらいの粘り強さは、 柔道よりレスリングの方が向いていると彼の資質を見抜いたのである。

 それが現在見事に的中し、ジュニアオリンピックの日本代表になるかもしれないと期待される選手になっている。

 このように柔道部から他のスポーツに転向させることができるのは、真田の他のスポーツへの知識が豊富であることと、 一人一人の生徒の将来を真剣に考える思いやりがあるからであろう。

 真田は、生徒の資質を見抜き、才能を引き出し、見きわめ、多くの優れた選手を育ててきた。

 その根源は何か。それは、人を育てようとする半端でない彼の情熱であり、生きがいそのものである。


写真は、右から真田先生、一人おいて仁藤愛、塩澤茜、青木愛、高木先生
(第26回 関東中学校柔道大会・平成13年8月9日〜10日・カシマスポーツセンター)


(HIRATUKA 市民ジャーナル 連載記事より抜粋)

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