平塚柔道物語その25
平塚柔道協会 会長 奥山晴治
2008年7月1日

25.平塚柔道物語・その25

真田州二郎の指導力−相手の心を見抜く

 現在、国学院大学の選手である坂崎光太は中学時代を振り返って語る。

 彼は関東大会の個人戦第1回戦では、プレッシャーで心も体もコチコチに固くなってしまっていた。 そのため力を発揮できず、運よく判定勝ちしたものの自分本来の柔道ができなかったのだ。

 その時、柔道部顧問の真田はすぐに坂崎を呼び出し、彼の頬をたたいた。 それはコチコチになった彼の心に渇(かつ)を入れる、やむを得ぬ真田の「愛の鞭」であった。

 坂崎はそのことで目が覚め、本来の力がよみがえった。2回戦では埼玉の代表を小外刈りに、 3回戦は栃木の代表を大内返しで1本勝ちし、目の覚めるような勝利を収めたのだ。 準決勝では全国1位の選手と対戦し敗れたものの、すばらしい試合であった。

 坂崎のこうした活躍も、「機を見るに敏」の真田の対応がなかったならば、あり得なかったといえよう。

 元大野中学柔道女子3羽鳥の一人である仁藤愛(現在日体大の選手)は、中学1年の時柔道部の中で一番弱かったという。 投げられることばかりで、誰も投げることができなかった。そんな不安な心を見抜いたのか。 真田は、仁藤の練習の時は何回も何回も投げられ役をつとめた。仁藤はそんな真田の心づかいがうれしくて、 気が付くと柔道にのめりこんでいたという。

 それから1年後の県大会で、3羽烏の2人は早々と自分の階級で優勝し、残すは仁藤の試合のみとなった。 先に優勝した2人は「必ず勝て!」と声援を飛ばす。仁籐は、仲間と同じように優勝しなければというプレッシャーと、 決勝の強豪を相手に果たして勝てるかという不安の中、見事に優勝した。

 その時、真田は仁藤のそばに駆け寄り「仲間の優勝というプレッシャーの中で良く闘ったなぁ」と激励した。 仁藤は、「自分の苦しい心のすべてを見抜いてくれたんだ」と、思わず泣いてしまったという。 それが真田への強い信頼感につながっていった。

 「相手の心を見抜く」ということは、人を育てる指導者の第一条件といえよう。 さらに、見抜いた上でどう対応するのか。その手の打ち方が相手にとって的確でなければならない。

 浜岳中学校の教師、柔道部顧問の真田州二郎は、これらのことを最も大切に考え、実践して来たといえよう。

 現在、平塚柔道協会小中学生の指導も担当している真田は、試合が終わった時に、負けてくやしい生徒に手をあげさせる。 本当にくやしいのかを確認し、くやしい心が成長する原動力になることを力説する。

 さらに、負けそうになった時、柔道が強くならない時、彼は言う。 「花が咲かない時は根を伸ばせ、誰でも伸び悩む時期がある。逆に順調に伸びすぎても、その反動がいつか必ず訪れる。 原因を追及し、くじけず、めげず、切れずに、地面の中の見えない根っこを伸ばして下さい。いつか必ず花が咲きます」と・・。


写真は、185cmの金井3段を相手に中学生に指導する真田州二郎(右)


(HIRATUKA 市民ジャーナル 連載記事より抜粋)

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